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2007年3月31日

ウシオツメクサ?ウシオハナツメクサ?

浦安市内の公園でウシオツメクサ(ナデシコ科)と思われる花が咲いていました。花びらの上半分がピンクの小さなかわいい花です。昨年植えられたトネリコの足下にポツンと一株ありました。ウシオツメクサは、海岸の湿った砂地に生えるということですが、どこから来たのでしょうか。

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ウシオツメクサについては、最近、千葉県下では、従来ウシオツメクサとされてきたものは、同属のウシオハナツメクサかウスベニツメクサの誤認だったという話があるようです。

ウシオツメクサ、ウシオハナツメクサ、ウスベニツメクサは、いずれもナデシコ科のウシオツメクサ属で、よく似ているようです。3種について、「日本帰化植物写真図鑑」とwebの「Flora of North America」の記載を元に整理してみました。

種名 ウシオツメクサ ウシオハナツメクサ ウスベニツメクサ
別名 シオツメクサ    
学名とシノニム Spergularia salina
Spergularia marina
Spergularia bocconi
Spergularia bocconii
Spergularia rubra
花の色 白色又は淡紅紫色 淡紅色 淡紅紫色
雄しべの数 (1)2~3(5) 8~10 6~10
托葉 合着する 合着する 合着しない
腺毛 上部にある他は全体無毛 茎や萼に著しく多い 茎の上部と葉にまばらにある
在来・帰化 自生および帰化 帰化 帰化

公園で見たものは、雄しべの数は3でした。また、下の写真のように、托葉はグルッとつながっていて、萼や花柄、花の直ぐ下の枝や葉には腺毛がありましたが、さらにその下の茎や葉は無毛でした。ということから、ウシオツメクサと判断しました。

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また、先月、葛西臨海公園で見かけたこの仲間も、雄しべの数は3で腺毛は花の周辺にあるだけでしたので(下の写真)、ウシオツメクサではないかと思っています。

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どちらも萼の基部近くに黒い班点がありました。萼の基部近くに黒い班点があればウシオハナツメクサという話もあるようですが、ウシオツメクサの学名、Spergularia salina(Spergularia marina)で検索すると黒い斑点が見えないものからはっきりとあるものまでいろいろありましたので、ウシオツメクサにも、萼の基部近くに黒い班点があってもおかしくないわけで、萼の基部近くに黒い班点があればウシオハナツメクサというわけではなさそうです。

とりあえず目安となるのは、雄しべの数かなということで、念のため、「ウシオツメクサ」と「ウシオハナツメクサ」で検索してそれぞれの画像の雄しべを見てみました。そしたら、「ウシオツメクサ」では、見た範囲で雄しべの数が数えられる画像の内6本以上あるものが1例ありましたが、それ以外は5本以内でした。一方、「ウシオハナツメクサ」の方は、私が見た範囲で雄しべの数が数えられる画像では(結構しつこく探して見たのですが)、どれも雄しべの数は3~5本ほどでした(中に、雄しべが10近くあるものがありましたが、花弁に白い部分がなくウスベニツメクサの誤認と思われるものでした)。腺毛は、下の方まではえているものもあれば、上部のみのものもありました。??です。

ネットの中で雄しべの数の違いにふれていらっしゃるのは、見つかった限りでは、「三河の野草」様だけでした。雄しべの数は、「Flora of North America」に記載されていましたが、日本帰化植物写真図鑑には、出ていません。ミドリハコベとコハコベの場合は、雄しべの数が、見分け方のポイントとして取り上げられているのに、どうしてこちらは、触れられていないのでしょうか。

牧野新日本植物図鑑には、シオツメクサ(ウシオツメクサの別名 Spergularia salina)は、「おしべはたいてい5個」、ウスベニツメクサは、「おしべは普通10個」とありましたが、残念ながら、ウシオハナツメクサは載っていませんでした。今度図書館に行って、他の図鑑でどう書かれているか調べてみたいと思っています。

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コメント

kuroharakuinaさん、コメントをどうもありがとうございます。

この「ウシオツメクサ?ウシオハナツメクサ?を書いてから6年経ちますが、勉強不足のまま、疑問符チカチカ状態のままです。

私が千葉県や東京都でこれまでに出会ったものは、いずれも雄しべが5本以下でした。
Webの「Flora of North America」では、Spergularia bocconiは、雄しべが6本以上あるといういうことなので、その情報が間違っていなければ、私がであったものは、Spergularia bocconi ではないということになります。S.bocconiの検索ででてくる画像をみると、見た範囲では、どれも雄しべは8〜10本ありました。

そこで、「Flora of North America」の検索表で、雄しべが5本以下で一番あっているものを探すと、Spergularia salina がありました。雄しべの数は、(1~)2~3(~5)ということですし、他の記述もはずれてはいないようですし、画像をみても、よく似ているという印象を受けました。
ということで、私が見たのは、Spergularia salina の方じゃないのかなあ・・・、そうなると、「ウシオツメクサ」ということになるのかな・・・?と思っていました。

ところが今回、コメントをいただいて、改めて、調べてみましたところ・・・・。
「Flora of North America」やカリフォルニア大学アーバイン校のものなどUSAのデータでは、Spergularia bocconi の雄しべの数は、以前と同じように、6本以上となっていました。
さらに、Spergularia bocconiは、他にS.bocconii やS.bocconei と表記しているところもあるので、bocconei でも検索してみましたら、雄しべの数に触れているものが1件みつかりました。「Botanical Society of the British Isles」の資料で、S. bocconei の雄しべについて、 (0-)2-5(-8)で、平均が4 という記述がありました。
え〜! どうして違うの!・・・ですね。
ウシオハナツメクサの学名をS.bocconi(i) としている図鑑等は、こちらの説を採っているのでしょうか。
私としては、どちらも原産地域ではないし、どちらがあっているのか、よくわかりません。

そもそもは、ウシオハナツメクサとウシオツメクサの区別点がはっきりわからず、調べてみたら、萼片の下部の黒い点の有無で区別できると書かれているものがありました。でも、それぞれの学名とされる S..bocconi(i) と S.salina について調べてみたら、どちらにも黒い点はあるので、じゃあ、他に素人でもはっきりと区別できるものはなんだろうと探したら、雄しべの数にいきあたったのですが・・・。
ちゃんとしたところの情報が食い違っているとなるとお手上げです。
振り出しに戻ってしまいました。

S.salina にしても、シノニムがたくさんあるし、S.marinaとどちらが正式な学名になるのか決着がついていないようで、すっきりしません。

日本にも、同定に役立つ詳しい情報が載っている公的なデータベースがあるといいなあと思います。


投稿: きまぐれ自然観察人 | 2013年6月 9日 00時23分

名古屋市でも有りました。全体に毛がおおく、花弁基部が白く、雄しべは大抵5個です。ウシオハナツメクサでしょうか?

投稿: kuroharakuina | 2013年6月 8日 12時17分

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